1. 今日の相談
「この作業、結局わたししかできないんです。毎月やってるから体で覚えてるんですけど、いざ人に教えようとすると、どう説明したらいいかわからへんくて。わたしが休んだ日に仕事が止まってしまったこともあります。手順書を作っておいたほうがいいのは分かってるんです。でも、いざ書こうとすると、どこから書けばいいのか……細かすぎても読まれへんし、ざっくりすぎても伝わらへんし」
これ、本当に多い相談です。できる人ほど、手順が頭と手の中にあって、言葉になっていない。毎日やっていることほど「当たり前すぎて」書き出しにくい。そして手順書がないと、その仕事はずっとあなたにくっついて回ります。休みにくい、任せられない、教えるたびに一から。
この「自分の中にしかないやり方」を、誰が読んでもできる手順書・マニュアルにしたい——というのが今日の相談です。
2. 大丈夫です
ほー先輩:大丈夫やで。まず言うとくけど、手順書が書けへんのは、あなたの説明が下手やからやない。その作業が上手すぎて、体が勝手に動くくらい身についてるからや。頭は「やる」と「説明する」を同時にはできへんねん。
そうなんです。あなたの手はもう完璧に手順を知っています。ただ、それが言葉になっていないだけ。今日やるのは、その頭の中の手順をいったん外に出して、AIに読みやすい手順書へ整えてもらうこと。
しかもAIには、「抜けているところ」を見つけてもらう役割もお願いします。自分では当たり前すぎて書き忘れる手順ほど、新しい人には分からない。そこをAIが質問で拾ってくれます。一度作れば、引き継ぎも、教え直しも、ぐっと楽になります。
3. 今日使うAI・道具
今日使うのは1つだけです。
- ChatGPT(無料で始められます) … 思いつくまま書き出した手順を、番号つきの手順書(マニュアル)に整えてもらいます。さらに「抜けていそうな手順」を質問で拾ってもらいます。
できた手順書は、共有フォルダやノートなど、職場のみんなが見られる場所に置くと、効果が何倍にもなります。
4. 実際にやってみる
そのまま真似できる手順です。いきましょか。
ステップ1:いつもの手順を、思いつくまま書き出す
きれいに書かなくて大丈夫。順番だけ意識して、「〜する、次に〜する」と走り書きで。目安は5分。「こんなん当たり前やろ」ということも、あえて書くのがコツです。その当たり前こそ、新しい人がつまずくところだからです。
固有名詞や、鍵の場所・パスワードのような情報は、「◯◯(別紙)」のようにぼかしてから渡しましょう。
ステップ2:ChatGPTに、このまま頼む
次の指示文を貼り付けて、ステップ1で書き出した手順を続けて貼ります。
次は、私がいつもやっている作業の手順を、思いつくまま書き出したものです。 ①番号つきの手順書(マニュアル)に整えてください。 ②各手順は「何をするか」が一目でわかる、短い文にしてください。 ③抜けていそうな手順や、あいまいな点があれば、決めつけずに私に質問してください。 書いていないことは、勝手に付け足さないでください。
(ここに、ステップ1で書き出した手順を貼る)
コツは③の「抜け・あいまいは質問して」です。AIが「この作業のあと、片づけはしますか?」「鍵は最後にかけますか?」と聞き返してくれるので、答えているうちに、自分では当たり前すぎて書き忘れていた手順が埋まっていきます。この往復が、手順書をぐっと使えるものにします。
ステップ3:質問に答えて埋め、実際にその手順どおりにやってみる
AIの質問に答えて手順を足したら、いちど手順書のとおりに、実際に手を動かしてみてください。読むだけでは気づかない抜けが、やってみると見つかります。最後に、新しい人や引き継ぎ相手が読んで分かるかを確かめる。言葉づかいや形はAI、中身が正しいかを決めるのは、その作業を知っているあなたです。
ほー先輩:手順書は、書いて終いやのうて、いっぺん自分でその通りにやってみるまでが作り方や。やってみて引っかからんかったら、それはもう立派なマニュアルやで。
5. 完成例
実際にやってみると、こんなふうに変わります。(架空の作業の例です)
ビフォー(いつもの手順を、書き出したまま)
朝いちばんに鍵を開ける
電気とエアコンをつける
昨日の連絡ノートを確認する
お茶と湯呑みの準備
今日の予定をホワイトボードに書く
体温計と消毒液の残りを見る
アフター(ChatGPTと整えたあと)
【朝の開所準備 手順書】
1. 玄関と事務所の鍵を開ける(鍵の場所は別紙)
2. 電気・エアコンをつける(夏は26℃を目安に)
3. 昨日の連絡ノートを確認し、申し送りをチェックする
4. お茶と湯呑みを準備する
5. 今日の予定と利用者をホワイトボードに書き出す
6. 体温計・消毒液の残りを確認し、少なければ補充する
7. (AIの質問で追加)玄関を開けたら、防犯システムを解除する
8. (AIの質問で追加)最後に、窓を1か所開けて換気する
書き出したときは6つだった手順が、AIの質問で8つになりました。「鍵を開けたあと、防犯システムはどうしますか?」「換気はしますか?」——自分では当たり前すぎて書いていなかった2つが埋まったのです。これで、はじめての人が読んでも同じようにできます。3つ分ならぬ一作業分で、15分ほどでした。
6. 使ってみた感想
いちばん効いたのは、AIの質問でした。自分ひとりで書いていたら、「防犯システムの解除」も「換気」も、絶対に書き忘れていました。当たり前すぎて意識にものぼらない手順を、「これはどうしますか?」と聞かれて初めて言葉にできる。この「抜けの見える化」は、一人では起きにくいものでした。
良かったのは、手順書を作る過程で、自分の仕事が整理されたことです。「あれ、この順番でよかったっけ」と見直すきっかけにもなりました。
一方で、手順の中身が正しいかは、AIには分かりません。AIができるのは、並べ方を整え、抜けを問いかけることまで。中身の正解を持っているのは、その作業をしているあなただけです。だから最後に一度、自分でその通りにやってみる。この確かめが、手順書を「本物」にします。
7. 今日できたこと
今日できたことを、言葉にしておきますね。
- 頭の中にしかなかった作業を、番号つきの手順書・マニュアルにできた。
- 「抜け・あいまいは質問して」で、当たり前すぎて書き忘れる手順を見つける型を覚えた。
- 手順書のとおりに一度やって確かめる、という仕上げ方を身につけた。
一つできれば、次の作業も同じやり方で手順書にしていけます。少しずつ、あなたの仕事を「引き継げる形」にしていきましょう。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:あなたが毎日当たり前にやってることは、実はすごい技やねん。それを手順書にしとくだけで、あなたは安心して休めるし、新しい人も助かる。仕事を一人で抱え込まんでええようになるんや。全部いっぺんにやらんでええ。今日はひとつ、手順書にできたら上等やで。また作りに来てな。
やさしいAI仕事術