1. 今日の相談
「メール自体は書けるんです。でも、送る前が怖くて。誤字脱字はないか、敬語は失礼になってへんか。何回も読み返すんですけど、自分で書いた文って、間違ってても正しく見えてしまうんですよね。この前は、送ったあとで誤字に気づいて、ずっと気になってました。かというて、毎回まわりの人に見てもらうのも申し訳なくて」
これ、とてもよく聞く相談です。特に、保護者の方や取引先など、ちゃんとした相手に送る文ほど、送信ボタンの前で手が止まる。自分の文章の誤字は、自分ではいちばん見つけにくいんです。書いた本人は「言いたいこと」を知っているので、脳が勝手に正しく読んでしまうから。
AIは誤字や読みにくい箇所の候補を出せます。ただし、送信直前の文章をそのまま外部AIへ貼ることはしません。まず職場で認められたAI環境か、入力してよい内容かを確認し、校正後は変更箇所を原文へ戻して確かめます。
2. 大丈夫です
ほー先輩:別の目を借りる前に、その文を外へ渡してええか確かめよ。AIの指摘も候補やから、最後は元の文と見比べるんやで。
大事なのは、入力可否の確認、指摘候補の取得、原文との照合を分けることです。丸ごと書き直させず、「どこが・なぜ気になるか」を候補として出してもらいます。
3. 今日使うAI・道具
使うのは、職場が利用を認め、入力情報の取扱条件を確認したAI環境です。承認状況、利用規約、保存・学習利用、管理者設定が分からない場合は、実際の仕事文を入力せず、架空文で校正の型だけ作ります。
4. 実際にやってみる
そのまま真似できる手順です。いきましょか。
ステップ1:入力してよい文章か確認する
顧客、採用、人事、医療・福祉、契約、会計、事故、未公開情報等を含む文書は、氏名を置き換えただけでは入力しません。社名、部署、連絡先、案件名、金額、日付、珍しい事情、添付内容の組合せでも相手や案件を特定できます。
情報を外すと校正の意味がなくなる場合は、AIを使わず職場の校正担当・承認済みツール・ローカルの機能等へ戻します。
ステップ2:入力可能なコピーへ分ける
元の文書を正本として残し、入力可能なコピーだけを作ります。「A様」「B社」への置換だけで終わらず、特定・推測につながる情報と、外部へ出せない条件を除きます。
ステップ3:AIへ指摘候補だけを頼む
次の指示文へ、ステップ2で作った入力可能なコピーだけを続けます。
次の文章を、送る前にチェックしてください。 ①誤字・脱字、②敬語やていねい語の間違い、③意味が伝わりにくい言い回し、を見つけてください。 全部を書き直すのではなく、「どこが・なぜ気になるか」を箇条書きで教えてください。 私の言葉づかいや内容は、なるべく変えないでください。 数字、日付、固有名詞、宛先、約束、期限、添付は推測せず「原文と要確認」としてください。 事実や条件を足さないでください。
(ここに、送る前の文章を貼る)
コツは「全部を書き直すのではなく、どこが・なぜ、を箇条書きで」の一文です。丸ごと書き換えてもらうと、直った文はきれいでも、あなたの言葉が消えてしまいます。指摘の形にしてもらえば、自分で選んで直せて、しかも次から間違えにくくなります。
ステップ4:変更箇所を原文と照合する
返ってきた指摘を、上から1つずつ見ます。AIの指摘が、全部正しいとは限りません。宛先、固有名詞、数字、日付、金額、期限、否定、例外、約束、添付を元資料と送信画面で確認します。声に出して読むことは補助になりますが、正式条件との照合の代わりにはなりません。
ほー先輩:AIの言うことを全部聞かんでええ。変えた所を元の文と並べて、意味や約束が動いてへんか確かめよな。
5. 完成例
実際にやってみると、こんなふうに変わります。(架空のお知らせの例です)
ビフォー(送る前の文章)
保護者各位
いつもお世話になっております。
来月の運動会につきまして、下記の通りご連絡させていただきます。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡して下さい。
よろしくお願い致します。
AIの指摘(箇条書き)
・「ご連絡して下さい」→「ご連絡ください」
("して"は不要です。「下さい」はひらがな「ください」がやわらかい印象です)
・「お願い致します」→「お願いいたします」
(この「いたす」は、ひらがなが読みやすいとされています)
・「下記の通り」→「下記のとおり」
(この「とおり」も、ひらがなが一般的で読みやすいです)
・「ご連絡させていただきます」→「ご案内します」でも十分伝わります
(「させていただく」は続くと少しくどくなりがちです)
アフター(直したあと)
保護者各位
いつもお世話になっております。
来月の運動会について、下記のとおりご案内します。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。
よろしくお願いいたします。
修正候補は4か所です。一般的な表記には複数の選択肢があり、組織の表記規程や文脈が優先されます。丸ごと書き換えず、必要な箇所だけを人が選び、固有名詞、数字、相手との関係に合う敬語は元の文と照合します。
6. 使うときの注意
個人情報保護委員会は、生成AIサービスへ個人データ等を入力する場合、学習利用の有無や利用規約・プライバシーポリシーを確認し、入力内容を踏まえて適切に判断するよう注意喚起しています。氏名の置換だけを安全確認にしません。
AIの指摘をうのみにしません。意図した表現や職場の表記を一般形へ変えたり、元にない意味を足したりすることがあります。元の依頼、正式資料、原文、送信画面と照らして仕上げます。
誤字や敬語だけでなく、宛先、約束、機密情報、添付まで見る場合は、AIで作った社外向け文章の送信前チェックへ進めます。
7. 今日できたこと
今日できたことを、言葉にしておきますね。
- AIへ入力してよい内容と環境を先に確認できた。
- 丸ごと書き直さず、変更候補と理由だけを受け取れた。
- 変更箇所を原文・元資料・送信画面と照合できた。
この型は、メールだけでなく、お便りや掲示、報告書の見直しにも、そのまま使えます。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:AIへ見せてええ文かを確かめる。直した所を元へ戻って確かめる。校正は、その二つまでが一組やで。
やさしいAI仕事術