1. 今日の相談
「行事のあとにアンケートを取りたいんですけど、いざ作ろうとすると、何を聞いたらいいのか思いつかなくて。とりあえず質問を並べてみると、今度は多すぎて答えてもらえなさそうやし。あと、あとで見返すと『楽しかったですよね?』みたいな、こっちの都合で答えを誘導してるような質問になってて。これでちゃんとした声が集まるんかな、って不安なんです」
これ、とてもよく聞く相談です。アンケートは、集めたあとだけでなく、作るときの設計も大切です。目的に必要のない質問が混じったり、無意識に「こう答えてほしい」がにじんだ設問になったりすると、回答を読み解きにくくなります。
この「何のために聞くかを決めて、答える人が判断しやすい設問のたたき台を作る」ところを、なんとかしたい——というのが今日の相談です。
2. 大丈夫です
ほー先輩:大丈夫やで。アンケートは、質問の数を頑張るもんやない。まず「集めた回答を何に使うか」を決めよ。そこから、必要なことを一問ずつ聞く形にするんや。AIには案を出してもろて、採用と配布は人が決めたらええ。
アンケート作成の出発点は、質問の数ではなく、「何のために・何を知りたいか」です。それが決まれば、設問(アンケートの項目)の候補をAIに提案してもらえます。
今日、気をつけるのは3つです。一問で一つのことを聞くこと、特定の答えへ誘導しないこと、個人情報を安易に集めないこと。名前や連絡先などを集める必要がある場合は、職場の担当者と、利用目的・必要性・保存期間・閲覧できる人を先に確認します。
3. 今日使うAI・道具
今日使うのは1つだけです。
- ChatGPT(無料で始められます) … 架空の目的だけを渡して、アンケート設問の候補を出してもらいます。実在する回答者の情報や、回収済みの回答は入力しません。
知りたいことを、ひとこと渡すだけです。
4. 実際にやってみる
そのまま真似できる手順です。いきましょか。
ステップ1:目的と使い道を書く
うまく書こうとしなくて大丈夫です。まず、集めた回答を何の判断に使うのかを書きます。
- 例:来年の夏祭りで、残したい点と見直したい点を決める
目的が曖昧なままなら、設問を作る前に担当者へ確認します。
ステップ2:ChatGPTに、このまま頼む
次の指示文を貼り付けて、ステップ1の目的を続けて貼ります。
次の架空の目的だけを使って、アンケート設問の候補を作ってください。 ①目的に必要な最小限の設問に絞ってください。 ②一つの設問では、一つのことだけを聞いてください。 ③特定の答えへ誘導する言葉、意味が曖昧な言葉、決めつけを避けてください。 ④目的に応じて、選択式・段階評価・自由記述のどれがよいか理由を添えてください。 ⑤個人情報や属性を集める案は勝手に追加せず、必要に見える場合は「担当者確認」と表示してください。 ⑥分からない条件は作らず、「要確認」と表示してください。
【目的と、回答を使う判断】 (ここに、ステップ1で書いた目的を貼る)
AIの案は、完成品ではありません。質問の意味や回答の選択肢が目的に合っているか、職場の事情に反していないかを人が確認します。
ステップ3:一問ずつ、人が見直す
出てきた設問を、一問ずつ確認します。
- 一問で二つのことを聞いていないか
- 特定の答えへ誘導していないか
- 選択肢に、当てはまるものがない人の逃げ道があるか
- 目的に不要な個人情報や属性を聞いていないか
- 回答を何に使うか、説明できるか
できれば、配布前に少人数で試し、迷う言葉や選びにくい回答欄がないかを確かめて直します。案を出すのはAI、採用と配布判断は人です。
ほー先輩:答えやすさだけで、正直な回答が決まるわけやない。でも、迷う言葉や誘導を減らすことはできるで。配る前に、誰かに試してもらおな。
5. 完成例
実際にやってみると、こんなふうに変わります。(架空の行事アンケートの例です)
ビフォー(知りたいこと)
・夏祭りの満足度を知りたい
・来年に向けての改善点を知りたい
アフター(ChatGPTが作った、確認前のたたき台)
1. 夏祭りに参加して、いかがでしたか?
(とても満足 / 満足 / ふつう / やや不満 / 不満)
2. 今後も残したい内容があれば、教えてください。(自由記述・任意)
3. 見直してほしい内容があれば、教えてください。(自由記述・任意)
4. 来年も参加したいと思いますか?
(はい / まだ分からない / いいえ / 回答しない)
目的から、4問のたたき台ができました。ここでの4問は例であり、どのアンケートにも当てはまる固定数ではありません。配布前に、言葉・回答形式・必要性を人が確認し、目的に不要な設問は外します。
(そして、集まった自由記述は、テーマ別にまとめるやり方で整理できます。)
そのまま使える設問パターン
聞きたいことが決まったら、この形に当てはめると誘導を避けやすくなります。
満足度をきく
今回の◯◯は、いかがでしたか。
(とても満足 / 満足 / ふつう / やや不満 / 不満 / 回答しない)
「よかったですか?」と聞くと「はい」に寄ります。中立の選択肢と「回答しない」を必ず入れます。
改善点をきく
見直してほしい点があれば、教えてください。(自由記述・任意)
「不満だった点」と書くと、不満がない人は答えにくくなります。「見直してほしい点」なら答えやすくなります。
参加のきっかけをきく
今回のことを、何で知りましたか。(あてはまるものすべて)
(掲示 / 知人から / 配布物 / ウェブサイト / その他 / 覚えていない)
「覚えていない」を入れないと、当てずっぽうの回答が混ざります。
次回の希望をきく
次回も参加したいと思いますか。
(はい / まだ分からない / いいえ / 回答しない)
「まだ分からない」があると、正直な回答が集まります。
自由記述で締める
そのほか、お気づきのことがあればご記入ください。(自由記述・任意)
答えにくくなる聞き方
- 二つを一度に聞く:「内容と時間はいかがでしたか」→ 内容は良く時間は長い人が答えられません。一問一項目に分けます
- 前置きで誘導する:「好評でしたが、いかがでしたか」→ 評価を先に見せない
- 必須にしすぎる:任意にできる設問は任意に。必須が多いと途中でやめられます
- 個人が分かる項目:氏名・部署・年齢は、本当に必要な場合だけ。集める理由と保存期間を先に決めます
6. 配布前に確認するところ
設問が「楽しんでいただけましたか?」のように、特定の答えへ誘導していないかを確認します。「参加して、いかがでしたか?」のような中立な聞き方へ直します。また、「会場と進行はよかったですか?」のように二つを一度に聞かず、必要なら分けます。
名前、連絡先、年齢、所属などを集める場合は、利用目的と必要性を職場の担当者に確認します。紙や入力フォームで本人から直接集めるときは、利用目的を本人へ示すことが原則です。目的に不要な項目は外し、保存期間・保管場所・閲覧できる人も先に決めます。
AIは、職場や地域の事情、聞いてはいけないことを知りません。設問候補はAI、採用と配布判断は人です。
設問の言葉や順番を考えるときは、総務省統計局の調査票の設計と質問文の注意点も参考になります。個人情報を集める場合は、個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドライン(通則編)と利用目的の明示に関するFAQを確認し、職場のルールと担当者の判断を優先してください。
7. 今日できたこと
今日できたことを、言葉にしておきますね。
- 回答を何に使うかから、アンケート設問のたたき台を作れた。
- 「一問一論点・誘導を避ける・必要なことだけ聞く」という確認の型を覚えた。
- 個人情報を集める前に、利用目的や扱いを担当者へ確認する線引きを持てた。
- 配布前に少人数で試し、人が直す手順を覚えた。
作ったアンケートで集まった声は、テーマ別にまとめれば、次の改善にそのまま活かせます。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:アンケートは、答えてくれる人の時間をもらうお願いや。何に使うかを決めて、必要なことだけ、誘導せん言葉で聞こな。AIの案は人が試して直す。集まった回答も、決めた目的の範囲で大事に扱うたってな。今日もていねいやったで。
やさしいAI仕事術