1. 今日の相談
「上から回ってくる通知とか、規程の文章が、とにかく固いんです。『標記の件につきまして』『ご査収のうえ』みたいな。これをそのままお客様や地域の方に渡しても、たぶん伝わらへん。でも、自分でやさしく書き直そうとすると、今度は『意味を変えてしもてないかな』って不安になって。結局、固いまま渡してしまうんです」
行政、職場、お店、地域活動で、本当によくある悩みです。難しい言葉は、書いた人は分かっていても、読む人には届かない。かといって、勝手にかみくだくと、大事な意味がずれてしまうかもしれない。この「固いまま渡すか、崩して意味が変わるか」の板挟みで、手が止まってしまう。
この「意味は変えずに、やさしい日本語にする」ところを、なんとかしたい——というのが今日の相談です。
2. 大丈夫です
ほー先輩:大丈夫やで。読みやすくする工夫は大切や。ただし、AIへ「意味を変えないで」と書くだけでは意味は守れへん。原文と一項目ずつ比べて、担当者が確かめるんやで。
そうなんです。やさしい日本語にするコツは、むずかしい言葉を、かんたんな言葉に置き換える。長い文を、短く区切る。専門用語には、説明を添える。この3つです。どれも、読む人にわかりやすく届けるための工夫です。そして、いちばん大事なのは「意味を変えない」こと。
今日は、実際の通知・規程・契約文を外部AIへ渡すのではなく、公開できる架空例で言い換えの型を作ります。実務の文章は、職場で承認された方法で原文との対照表を作り、専門用語だけでなく、対象・条件・数字・期限・例外・手続きの順番を担当者が確認します。
3. 今日使うAI・道具
今日使うのは1つだけです。
- ChatGPT … 実在の通知や規程を含まない公開用の架空例から、短い文とやさしい言葉の型を試す場合に使います。
法令、規程、契約、医療・福祉、安全、災害対応、給付や申請条件などは、言い換えで扱いが変わると実害が出ます。正式な原文と担当部署の確認を優先し、AIだけで公開可否を決めません。
4. 実際にやってみる
そのまま真似できる手順です。いきましょか。
ステップ1:利用条件と確認者を決める
文書の管理者に、AI利用の可否、利用できる環境、公開前の確認者を確かめます。社外秘・個人情報・契約上の秘密・未公開情報を含む文書は、名前を置き換えても外部AIへ貼りません。
ステップ2:公開用の架空例で型を試す
実際の文書を元にしない架空の通知を用意し、次の指示文で言い換えの型を試します。
次の架空の文章を、やさしい日本語の下書きへ言い換えてください。 ①長い文は短く区切り、むずかしい言葉は、かんたんな言葉にしてください。 ②専門用語には、かんたんな説明を(かっこ)で添えてください。 ③意味は変えないでください。書いていないことは、足さないでください。 ④原文と下書きを一文ずつ対応させ、変えた箇所を対照表にしてください。 ⑤省略・意味変更の可能性がある箇所は「要確認」としてください。 読む人は、その分野にくわしくない一般の方です。
(ここに、実務と無関係な架空の文章を貼る)
「意味は変えないで」は希望であって保証ではありません。対照表は確認をしやすくする補助です。AIが「要確認」を付けなかった箇所も、元の意味が保たれているとは限りません。
ステップ3:実務の文は承認された方法で照合する
実務の文は、原文と下書きを並べ、対象・条件・数字・期限・例外・禁止事項・手続きの順番を一項目ずつ照合します。制度や専門分野の文章は、担当部署や専門家の確認を受けます。読みやすさだけでなく、誤解しやすい箇所が残っていないか、想定読者にも確認します。
ほー先輩:やさしくすることと、いいかげんにすることは、ちがうで。かんたんな言葉にしても、中身はきっちり同じ。そこだけは、あなたの目で守ったってな。
5. 完成例
実際にやってみると、こんなふうに変わります。(架空の通知の例です)
ビフォー(固い通知文)
標記の件につきまして、下記のとおり周知いたしますので、
ご査収のうえ、期日までにご提出賜りますようお願い申し上げます。
なお、不備がある場合は受理いたしかねます。
アフター(ChatGPTがやさしい日本語にしたもの)
このことについて、下記のとおりお知らせします。
内容をご確認のうえ、期日までにご提出ください。
(「ご査収」=内容を確認して受け取ること)
書類に足りないところがあると、お預かりできないことがあります。
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。
固い通知を、やさしい言葉へ置き換えた下書きです。「ご査収」のような言葉には説明を添えています。期限、金額、対象条件が元の通知と同じ意味かを人が確認します。
文章そのものが長い場合は、先に長い文章を短くする要約の仕方で削ってから言い換えると楽です。
6. 言い換えたあとに確認すること
専門用語は、すべて消す必要はありません。正式な言葉を残し、その直後に短い説明を添えると、元の意味と読みやすさを両方保ちやすくなります。
いちばん気をつけたいのは、やさしくする途中で条件が変わることです。期限、金額、対象者、例外、手続きの順番は、元の文と一つずつ見比べます。専門的な内容は、分野を知る担当者にも確認します。
やさしくするのは、いいかげんにすることではありません。AIの案は下書きとして使い、正確さと伝わり方の両方を人が確かめます。
7. 今日できたこと
今日できたことを、言葉にしておきますね。
- 架空例で、やさしい日本語の言い換え方を試せた。
- 原文と下書きの対照表を使う型を覚えた。
- 対象・条件・数字・期限・例外・順番を担当者と確認できた。
これは、通知だけでなく、お知らせやマニュアルを、外の人にわかりやすく渡したいときにも、そのまま使えます。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:やさしい言葉に変えたら、原文と比べるひと手間までが仕事やで。読める人を増やしながら、条件や例外を落とさん形を、確認者と一緒に作ろな。
やさしいAI仕事術