1. 今日の相談
「複数の見積書をもらいましたが、会社ごとに書き方が違います。合計金額だけを見て決めてよいのか不安です」
見積書は、同じ名前の仕事でも含まれる範囲が違うことがあります。金額の列だけを作るのではなく、作業範囲、納期、追加費用、修正回数、支払条件を同じ項目へ並べ直すと、確認すべき違いが見えます。
AIは記載内容の整理を助けられますが、空欄の条件や相手の意図を推測させてはいけません。書かれていないことは「要確認」のまま残します。
2. 大丈夫です
ほー先輩:いちばん安いところを探す前に、何が含まれてる金額かをそろえて見よ。
最初から優劣を決める必要はありません。まずは各見積書に書かれている事実を、同じ見出しの下へ移すだけです。
比較メモは決裁書ではありません。選定基準、予算、契約権限は職場のルールを優先します。
3. 今日使うAI・道具
使うのはChatGPTと、複数の見積書です。AIには実際の会社名、担当者名、住所、振込先、見積番号、案件名、金額、作業範囲、納期、支払条件を渡さず、空の比較表だけを作らせます。
実際の条件は権限管理された比較表へ人が記入し、見積書原本を正本にします。
4. 実際にやってみる
1. 共通の確認項目を作る
合計金額、作業範囲、含まれない作業、納期、修正回数、追加費用、支払時期、有効期限を用意します。
2. 原本に書かれた事実だけを抜く
「通常は含まれるはず」と考えず、明記された内容だけを移します。見つからない項目は空欄にせず「要確認」とします。
3. AIへ空の比較表だけを頼む
実際の会社・担当者・案件・金額・見積条件を入力せずに使える、
見積条件の空の比較表を作ってください。
項目は「合計金額」「作業範囲」「含まれない作業」「納期」「修正回数」
「追加費用の条件」「支払時期」「有効期限」「要確認」とします。
条件を推測せず、会社の優劣や選定結果を決めないでください。
人が記入していない欄は「原本と要確認」と残せる形にしてください。
空の比較表を権限管理された文書へ移し、各社の金額、範囲、納期、条件は見積書原本を見ながら人が一項目ずつ記入します。実際の見積内容をAIへ戻しません。
4. 原本と一項目ずつ照らす
数字、税の扱い、日付、作業範囲を見積書原本で確認します。AIが似た言葉をまとめて意味を変えていないかも見ます。
5. 質問してから決める
「要確認」を相手への質問に直します。回答は口頭だけで終えず、必要に応じて書面や正式な見積書へ反映してもらいます。
5. 完成例
以下は架空の例です。
【見積比較メモ】
項目 A社 B社
合計金額 110,000円 96,000円
作業範囲 原稿整理・制作 制作
含まれない作業 写真撮影 要確認
納期 8月20日 契約後3週間
修正回数 2回まで 要確認
追加費用 3回目以降に発生 特急対応時に発生
支払時期 納品月の翌月末 着手前50%・納品後50%
有効期限 7月31日 要確認
【先に確認すること】
・B社の作業範囲に原稿整理が含まれるか
・B社の修正回数と見積有効期限
金額の低さだけで結論を出さず、条件の違いと質問事項を分けています。
条件を聞き出すときの例文(そのまま使えます)
比較メモに「要確認」が残ったら、そのまま相手へ聞きます。[ ] の中を入れ替えてください。他社の見積内容や金額は絶対に伝えません。値下げ交渉の道具にすると、次から正直な見積もりが出てこなくなります。
① 作業範囲を確認する
件名:見積番号[番号]の作業範囲について
[会社名] ご担当者様
お見積りをいただき、ありがとうございます。
社内で検討するにあたり、下記について確認させてください。
・[作業名]は今回の作業範囲に含まれますでしょうか
・含まれない場合、別途お願いする際の費用の目安をお教えいただけますか
お手数ですが、[日付]までにお知らせいただけますと幸いです。
② 追加費用が発生する条件を確認する
お見積りの範囲内で進められなくなるのは、
どのような場合でしょうか。
・修正が[回数]を超えた場合
・[想定される変更]が発生した場合
・[納期を早めたい]場合
それぞれの費用の考え方をお教えいただけますでしょうか。
あとから増える条件を先に聞くのが、比較でいちばん効きます。
③ 有効期限・着手時期を確認する
・このお見積りの有効期限をお教えください
・ご発注からご着手までの期間はどのくらいでしょうか
・[希望納期]に間に合わせる場合、いつまでに発注が必要でしょうか
④ 条件をそろえて出し直してもらう
比較検討のため、下記の条件をそろえた形で
あらためてお見積りをいただけますでしょうか。
・[作業範囲]:[含む/含まない]
・[数量・仕様]:[条件]
・[納期]:[日付]
・[修正回数]:[回数]
同じ条件で拝見したく、お手数をおかけいたします。
条件をそろえてから比べるのが本筋です。バラバラの見積書を金額だけで並べても意味がありません。
⑤ 見送りを伝える(断り方)
件名:お見積りの件([案件名])
このたびは、お忙しいなかお見積りをご用意いただき、
ありがとうございました。
社内で検討いたしました結果、
今回は[別の方法/今回は見送り]とさせていただくことになりました。
ご期待に沿えず申し訳ございません。
またの機会がございましたら、あらためてご相談させてください。
理由は書かなくて構いません。他社に決めたとは書かないのが礼儀であり、次の関係も守ります。
⑥ 発注を決めたことを伝える
お見積りの件、社内で承認が下りましたので、
下記の条件で正式にお願いいたします。
・見積番号:[番号]
・[条件を列挙]
正式な発注の手続きについて、ご案内いただけますでしょうか。
見積もりのやり取りで書かないほうがよいこと
- 他社の金額・見積書の中身— 相手の営業秘密に触れる場合もあり、信用を失います
- 「もう少し安くなりませんか」だけ— 何を削れば安くなるのかが分からず、品質だけ落ちます。条件を示して聞きます
- 社内の予算額をそのまま伝える— その金額に寄せた見積もりが出てきます
- 返事をしないまま放置— 見送るなら伝えます。相手は枠を空けて待っています
- 口頭の合意で進める— 金額・範囲・納期は、必ず文面に残します
6. 使うときの注意
AIが作った比較表は下書きです。税、納期、契約条件、知的財産、キャンセル、個人情報の取扱いは原本や規約を確認し、権限のある人が判断します。
見積もりを依頼する前なら、条件をそろえた見積もり依頼メールが使えます。項目を自由に比較したい場合は、複数案を比較表にする方法も確認してください。
7. 今日できたこと
- 見積書を同じ項目で並べ直せた。
- 書かれていない条件を推測せず、要確認で残せた。
- 金額以外の違いを質問に変えられた。
- 原本と照らしてから判断する準備ができた。
比較メモの目的は、AIに一番を決めてもらうことではありません。判断前に、条件の抜けと違いを見つけることです。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:表がきれいでも、原本と違ったらあかんで。最後は見積書と回答を並べて、人が決めよな。
やさしいAI仕事術