1. 今日の相談
「来週、保護者の方との個人面談があるんです。せっかく時間をいただくのに、何を聞けばいいのか、頭が回らなくて。毎回その場の流れで話して、終わってから『家での睡眠のこと、聞くの忘れた…』って後悔するんです。ちゃんと準備したいのに、どこから手をつければいいのか」
保護者面談や個人面談の準備は、とてもよく聞く悩みです。面談は、保護者の方の貴重な時間をいただく場。聞きたいことは色々あるのに、いざ整理しようとすると浮かばない。頭が回らないのは、真剣に向き合おうとしているからです。
ただし、今日は最初に大事な話をします。面談の準備は、個人情報のかたまりを扱う仕事です。AIに手伝ってもらえる部分と、絶対に渡してはいけない部分を、はっきり分けてから始めます。
2. 大丈夫です
ほー先輩:大丈夫やで。まず、今日の分担を決めよか。AIに作ってもらうのは、面談で聞く「一般的な観点」まで。その子の名前も、様子も、事情も、AIには渡さへん。観点のリストを見ながら「今回のあの子には、これとこれを聞こう」と決めるのは、毎日その子を見てきたあなたの仕事や。
この分担には、理由があります。
- 面談の準備メモには、その子の情報がにじみやすい。名前を伏せても、診断のこと、家庭のこと、その子だと分かる出来事——組み合わせると個人が特定できる情報は、AIに渡しません
- そして、AIはその子を知りません。「この子はこういう子だから」という人物像をAIに推測させると、実際とずれた思い込みが準備に混ざります
だから今日AIに渡すのは、面談の「種類」と「目的」だけ。それだけでも、聞くことの観点リストは十分に作れます。
3. 今日使うAI・道具
今日使うのは1つだけです。
- ChatGPT(無料で始められます) … 面談の種類と目的から、一般的な質問の観点リストを作ってもらいます。特定のお子さん・ご家庭の情報は入力しません。
職場で使ってよいか(承認された環境か)も、いつもどおり確認してから始めましょう。
4. 実際にやってみる
ステップ1:AIに渡してよいものを、2つだけメモする
渡すのは、この2つだけです。
面談の種類:放課後等デイサービスの半期面談(30分)
面談の目的:家庭での様子を伺って、支援の方向を一緒に確認したい
ここに個人の情報がひとつも入っていないことを確認します。名前・年齢・診断名・家庭の事情・その子と分かる出来事——どれも書きません。
ステップ2:ChatGPTに、このまま頼む
次の面談の準備として、保護者の方に伺う質問の「観点リスト」を作ってください。 特定のお子さん・ご家庭の情報は渡しません。一般的な観点として作ってください。 ①「家庭での様子」「困りごと・心配ごと」「園や事業所への要望」「今後の目標」のような、大きなテーマごとに質問例を挙げてください。 ②答えを決めつける聞き方や、家庭の事情に踏み込みすぎる質問は避けてください。 ③相手の人物像や、返ってきそうな答えを推測して書かないでください。
【面談の種類】(ここに書く) 【面談の目的】(ここに書く)
ステップ3:観点から「今回聞くこと」を選ぶ——ここからは、あなたの仕事
返ってきた観点リストを眺めて、今回の面談で聞くことを選ぶのは、担当者であるあなたです。職場で日々その子を見てきたあなたには、AIにない気づきがあります。
- 選んだ質問は、紙のメモや職場で承認された記録に書き写します。その子の名前や具体的な気になりごとを書き足すのは、AIの画面ではなく、こちら側で
- 家庭の事情など、聞くかどうか迷うデリケートな話題は、自分だけで決めずに上司や職場の方針に相談してから
- そして、リストは台本ではありません。保護者の方が話したいことが出てきたら、リストを置いて、まず聴く
ほー先輩:リストは、聞き漏らしを防ぐお守りや。面談の主役は、リストやのうて、目の前の保護者さんとその子やからな。
ひとつ線引きを。トラブルの対応、苦情への対応、重い相談ごとの面談は、この記事のやり方の外です。そうした面談の準備は、必ず職場・上司と一緒に。
5. 完成例
架空の例で見てみましょう。ステップ1の2行から、こんな観点リストが返ってきます。
アフター(ChatGPTが作った観点リスト・抜粋)
【家庭での様子】
・最近のご家庭での過ごし方で、変化を感じることはありますか
・ご家庭で楽しんでいること、好きな遊びは何ですか
【困りごと・心配ごと】
・いま、ご家庭で困っていることはありますか
・生活リズム(睡眠・食事など)で気になることはありますか
【園・事業所への要望】
・私たちの関わりで、続けてほしいこと・変えてほしいことはありますか
【今後の目標】
・これからの半年で、「こうなったら嬉しい」と思うことはありますか
ここから先は手元の仕事です。担当者が「今回は睡眠の話と、送迎の要望を必ず聞こう」と選んで、紙のメモに書き写す。その子の名前も、具体的な様子も、AIには最後まで渡していません。それでも、聞き漏らしを防ぐ準備はちゃんとできています。
6. 使う前に確認したいこと
この使い方の値打ちは、面談の席で「次に何を聞こう」と焦らなくてよくなることです。観点が手元にあると、会話が途切れても落ち着いて次に進めます。聞き漏らしの後悔も減らしやすくなります。
ただし、守る線は最後まで変わりません。AIに渡すのは面談の種類と目的だけ。その子の情報は、名前を伏せても渡さない。観点から何を聞くかを決めるのも、面談で聴くのも、あなた。AIが出した質問例が今回の面談に合うかどうかは、その子と保護者の方との日々の関わりを踏まえて、担当者が判断します。
面談のあとの記録は、その子とご家庭の機微な情報を含みます。職場で承認された環境と、置き換えのルールを確認してから——そのうえで、支援記録の整え方の安全なやり方が、そのまま使えます。
7. 今日できたこと
- 面談準備の分担が分かった——AIは「一般的な観点」まで、選ぶのは担当者。
- 個人の情報(名前・診断・家庭の事情・その子と分かる出来事)をAIに渡さずに、聞くことリストを準備できた。
- デリケートな話題は職場に相談する、という線引きを覚えた。
次の面談も、2行のメモと観点リストから、落ち着いて準備できます。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:面談の準備で頭が回らんのは、あなたが真剣やからや。観点の下ごしらえはAIに任せて、あなたは「その子の今」を思い浮かべることに時間を使ったらええ。職場で日々見てきたあなたには、AIにない気づきがある。それをご家庭での様子と持ち寄って、一緒に考えるのが面談やねん。ええ面談になるで。
やさしいAI仕事術