1. 今日の相談
「台風のときの臨時休業やシフト変更を伝えるために、緊急連絡網を作ってと言われました。電話番号を順番に並べた表を作ればいいんでしょうか。ただ、個人の携帯番号を一覧にして配るのも気になっていて。あと、電話に出ない人がいたら、そこで止まりますよね」
そのとおりです。連絡網がいちばん失敗するのは「途中で止まる」こと。そして次に多いのが、個人情報の扱いで揉めることです。
緊急連絡網は、番号の一覧表ではありません。回す順番・つながらないときの迂回・個人情報の扱い——この三つを決める仕事です。
2. 大丈夫です
ほー先輩:非常時ってのはな、誰かが電車の中やったり、電池が切れてたり、寝てたりするもんや。せやから「全員つながる前提」で作った連絡網は、必ずどこかで止まる。「つながらん前提」で作るんや。
決めることは三つです。
- 順番……誰が起点で、誰が誰に回すか。1人あたりの連絡先は2〜3人まで
- 迂回……10分応答がなければ次の人へ飛ばし、あとで折り返す。この一行があるだけで止まらなくなります
- 個人情報……番号一覧を全員に配らない。自分が掛ける相手の分だけ渡す方法があります
電話だけにこだわる必要もありません。一斉連絡(LINEグループやメール)を第一報にして、電話は応答確認に使う——この二段構えにすると、速さと確実さが両立します。
3. 今日使うAI・道具
使うのはChatGPTと、正式な職員名簿です。
- 職員名簿……連絡先の正は総務・管理者が持つ名簿。記憶や古い表から写さない
- ChatGPT……連絡網の空の様式と、非常時に読み上げる連絡文のひな形を作るところまで
実際の氏名・電話番号・住所をAIへ入力しません。様式を作ってから、名簿を見て人が記入します。埋めた後の表をAIに「確認して」と貼り戻すのも同じ理由でやめておきます。
4. 実際にやってみる
1. 起点と枝分かれを決める
管理者
├─ Aさん ─ Bさん ─ Cさん
├─ Dさん ─ Eさん ─ Fさん
└─ Gさん ─ Hさん
一列に長くつなげないのがコツです。枝を分けるほど、1本止まったときの被害が小さくなります。
2. 迂回ルールを一行で決める
・電話は2回まで。応答がなければ10分待たず次の人へ掛ける
・飛ばされた人には、あとで起点(管理者)から折り返す
・最後の人は、回り切ったことを起点へ報告する
「最後の人が起点へ報告」まで入れると、どこで止まったかが分かります。
3. 伝える内容のひな形を先に作る
非常時は、掛ける側も慌てています。読み上げるだけで済む形にしておきます。
【緊急連絡】◯◯(店・事業所名)の連絡網です。
本日[日付]、[臨時休業/開始時刻変更]となりました。
理由:[台風接近のため]
次の連絡:[本日17時にあらためて連絡します]
この内容を、次の[氏名]さんへお伝えください。
4. AIへ空の様式を頼む
実際の氏名や電話番号を入力せずに使える、職場の緊急連絡網の空の様式を作ってください。
枝分かれ式(起点1人→枝3本→各枝2〜3人)で、氏名と連絡先が空欄の表と、
「応答がないときの迂回ルール」「最終報告」の記入欄、
読み上げ用の連絡文ひな形(日付・内容・次の連絡が空欄)を付けてください。
5. 配り方を決める
全員に全番号を配ると、退職者が出るたびに回収の問題が起きます。
- 各自に渡すのは自分が掛ける相手の分だけ
- 全体表は管理者と起点だけが保管
- 紙で配る場合は「業務外で使わない・撮影して共有しない」を一行添える
6. 15分のテストを一度やる
「テストです。回してください」だけの連絡を実際に回します。作って終わりの連絡網は、非常時に必ず止まります。所要時間と止まった場所を記録して、枝を組み替えます。
5. 完成例
以下は架空の例です。
【◯◯店 緊急連絡網】(2026年8月改定)
起点:店長
├─ 枝1:Aさん → Bさん → Cさん
├─ 枝2:Dさん → Eさん → Fさん
└─ 枝3:Gさん → Hさん
ルール:
1. 第一報はLINEグループへ一斉送信。電話はその後の応答確認
2. 電話は2回まで。応答がなければ次の人へ。飛ばされた人へは店長が折り返す
3. 各枝の最後の人は、回り切ったら店長へ「枝◯完了」と報告
4. 各自が持つのは、自分が掛ける相手の連絡先のみ
5. テストは年2回(6月・11月)。所要時間を記録する
前回テスト:2026年6月12日 全枝完了まで14分(枝2で8分停滞→枝を組み替え済み)
テストの記録まで書いてあると、次の担当者が「生きている連絡網」だと分かります。
場面別の連絡文(そのまま使えます)
① 臨時休業
【緊急連絡】[店舗名]です。台風[号数]接近のため、本日[日付]は臨時休業とします。
出勤予定だった方は自宅待機をお願いします。
営業再開は[日付]の[時刻]に、あらためてこの連絡網でお知らせします。
② 開始時刻の変更
【緊急連絡】[店舗名]です。[理由]のため、本日の開店を[時刻]に変更します。
[対象シフト]の方は[時刻]に出勤してください。
判断に迷う場合は[管理者]([連絡手段])へ確認してください。
③ 安否確認(災害時)
【安否確認】[事業所名]です。ご自身とご家族の無事を、
[返信方法]で[時刻]までにお知らせください。
出勤の要否は、安否確認がそろってから別途連絡します。
安否確認と出勤指示を分けるのが要点です。混ぜると、無事の報告より先に出勤の心配が始まります。
緊急連絡網で気をつけたいこと
- 一列に長くつなぐ——1人止まると全員止まります。枝を分けます
- 迂回ルールを決めない——「出るまで掛け続ける」は、そこで連絡網が止まっています
- 全員に全番号を配る——必要な範囲だけ。退職時の回収も決めておきます
- 名簿を更新しない——入退職のたびに直します。年2回のテストが点検を兼ねます
- テストをしない——非常時が初回テストになる連絡網は、ほぼ止まります
- 業務連絡に使い回す——緊急用は緊急専用に。普段から鳴る番号は、非常時に無視されます
安否確認そのものの文面は、安否確認の連絡の仕方にまとめてあります。
6. 使うときの注意
従業員の連絡先は個人情報です。取得の目的(緊急連絡)を伝えて集め、目的外に使わない——ここは作り方以前の前提です。保管場所と閲覧できる人も決めておきます。
医療・介護・保育など、行政への報告や利用者家族への連絡が定められている業種では、職員向け連絡網とは別に、所管への連絡手順を確認してください。BCP(事業継続計画)の様式が決まっている場合は、そちらに合わせます。
実際の氏名・電話番号をAIへ入力しない運用は、作った後も守ります。
7. 今日できたこと
- 連絡網を「順番・迂回・個人情報」の三つで設計できた。
- つながらない前提のルールを一行で決められた。
- 読み上げるだけの連絡文ひな形を用意できた。
- 配り方とテストの予定まで決められた。
あとは一度、テストで回すだけです。回った連絡網だけが、本番で役に立ちます。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:連絡網ってな、作った日は誰も褒めてくれへん地味な仕事や。せやけど台風の朝、全員に15分で連絡が回ったとき、あんたの地味な30分が全員を守るんや。派手やないけど、ええ仕事や。テストまでやって、初めて完成やで。
やさしいAI仕事術