1. 今日の相談
「先週、夏祭りが終わって反省会をしたんです。『受付の列が長かった』『雨天の判断が遅れた』——いい意見がたくさん出ました。でも去年もきっと同じような会をしたはずなのに、今年の準備で去年の反省を見た記憶がなくて。私のこの走り書きも、たぶん来年誰も見ない。毎年ゼロからやり直してる気がします」
これは「メモを取っていない」問題ではありません。反省が「その日の記録」の形のままで、「来年読む形」になっていない問題です。来年の担当者が知りたいのは議論の経過ではなく、「結局どうすることになったのか」「最初に何を確認すればいいのか」だけ。形が違うから、届かないのです。
振り返りの整理では自分の学びを、アンケートのまとめではみんなの声を扱いました。今日は組織の記憶を、時間差で引き継ぐやり方です。
2. 大丈夫です
ほー先輩:大丈夫やで。反省会の声がちゃんと手元にあるんやから、あとは「来年読む形」に並べ直すだけや。それはAIの得意技やねん。ただし今日の約束は2つ。個人や職場が分かる情報を置き換えてから渡すこと。そして「誰のせいやったか」をAIに考えさせへんことや。
2つ目が今日の肝です。
- 反省メモには「受付が混乱した」のような文が並びます。ここでAIに原因をまとめさせると、メモにない「〜が原因と思われる」という推測が混ざりがちです。書いていない原因・責任・評価は、AIに作らせません
- 職員名・施設名・具体的な日付や場所、珍しい出来事など、組み合わせると個人や職場が分かる情報は置き換えます。ただし、置き換えると事実の意味が変わる記録や、事故・けがに関する記録はAIへ渡さず、職場の正式な様式で扱います
3. 今日使うAI・道具
今日使うのは1つだけです。
- ChatGPT(無料で始められます) … 反省会の走り書きを、来年の担当者向けの引き継ぎメモに整えてもらいます。個人や職場が分かる情報を置き換えたメモだけを渡します。
職場で使ってよいか(承認された環境か)の確認も、いつもどおり先に。
4. 実際にやってみる
ステップ1:反省会のメモから、個人や職場が分かる情報を置き換える
職員名・施設名・行事名・具体的な日付や場所は、Aさん・施設A・行事Aなどの記号にします。子どもや保護者の情報、事故やけがの詳細は、この引き継ぎメモづくりではAIに渡しません。
・受付の列が最大20分待ちになった(受付2名では足りなかった)
・雨天プログラムへの切り替え判断が開始30分前で、掲示が間に合わなかった
・出し物の音響トラブル。予備のスピーカーで対応できた
・片付けは去年より30分早く終わった(前日に道具を分類しておいたのが良かった)
・来年は受付を3名にする、と反省会で決定
・雨天判断を「前日夕方に仮決定」にする案が出た(決定はしていない)
ポイント:反省会で「決まったこと」と「案が出ただけのこと」を区別して書いておくことです。ここが混ざると、来年「決まってたはず」の混乱が起きます。
ステップ2:ChatGPTに、このまま頼む
次の行事の反省メモを、来年の担当者向けの「引き継ぎメモ」に整えてください。 ①「来年こうすると決まったこと」「来年の担当者が最初に確認すること」「残った課題(未決定)」の3つの見出しに分けてください。 ②うまくいったことも「続けること」として残してください。 ③事実の意味を変えず、メモに書かれていない出来事・原因・理由・責任・感情・評価・診断を推測して書き足さないでください。不明な点は「要確認」としてください。
【行事名・時期】(例:夏祭り・7月) 【反省メモ】(ここに貼る)
ステップ3:反省会の目で確認する——ここからは人の仕事
- 「決まったこと」欄に、決まっていないものが昇格していないかを確認します。ステップ1の区別が効くのはここです
- 引き継ぎメモは、職場のルールに沿って、必要な職員だけが見られる保管場所へ。来年の担当者が確認できる場所を、職場で決めておきます
- 反省の中身そのもの(何を変えるか)は、メモの整理とは別に、職場の話し合いで決める——AIは決定に加わりません
ほー先輩:「決まったこと」と「案」の区別だけは、AIやのうて、その場におった人しか守られへん線やで。
5. 完成例
架空の例で見てみましょう。ステップ1のメモから、こんな引き継ぎメモが返ってきます。
アフター(ChatGPTが整えた引き継ぎメモ・抜粋)
# 夏祭り 引き継ぎメモ(来年の担当者へ)
## 来年こうすると決まったこと
・受付は3名体制にする(今年2名で最大20分待ちが発生)
## 続けること(今年うまくいったこと)
・道具の前日分類(片付けが30分短縮できた)
・音響の予備スピーカー準備(当日のトラブルに対応できた)
## 来年の担当者が最初に確認すること
・雨天プログラムの切り替え判断の時期(今年は30分前で掲示が間に合わず。
「前日夕方に仮決定」案あり——未決定。要確認)
## 残った課題(未決定)
・雨天判断のルール化(案は出たが決定していない)
「決まったこと」と「未決定」がはっきり分かれているので、来年の担当者は準備会議の議題がこのまま決まる——それがこのメモの値打ちです。
6. 使う前に確認したいこと
守る線は3つ。個人や職場が分かる情報を置き換え、子どもや保護者の情報は渡さない。事故やけがに関わる反省は、このメモではなく職場の正式な報告様式で扱う(ヒヤリハットの記録の線引きと同じです)。そして「何を変えるか」の決定は職場の話し合い——AIが整えるのは、決まったことの並べ方までです。
行事の手順そのものを残したいときは、手順書づくりと組み合わせると、来年はさらに楽になります。
7. 今日できたこと
- 反省会の走り書きが、来年の担当者が最初に読む一枚になった。
- 「決まったこと」「最初に確認すること」「未決定の課題」を分ける、引き継ぎの型を覚えた。
- 原因や責任をAIに推測させない、個人名を渡さない、という安全な線引きが分かった。
来年の反省会のあとも、同じ型で10分。行事のたびに、職場に記憶が積み上がっていきます。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:毎年ゼロからやり直してた準備が、来年は「去年の一枚」から始まる。これはな、あなたが楽になるだけやのうて、次の担当者への思いやりでもあるんや。反省会の熱がいちばん高い今日のうちに、10分だけ。一年後のみんなが、今日のあなたに感謝するで。
やさしいAI仕事術