1. 今日の相談
「トラブルがあって、上司に『顛末書を出して』と言われました。始末書なら謝る紙だと分かるのですが、顛末書は何が違うんでしょうか。謝罪は入れるべきなのか、どこまで詳しく書けばいいのか、まったく見当がつきません」
顛末書でつまずくのは、始末書と同じつもりで書こうとするときです。
顛末書は、お詫びを述べる紙ではありません。起きたことの経過を、あとから読む人が追える形で残す紙です。だから主役は、気持ちではなく順番です。
今日は、時系列を作って、事実と推測を分ける手順を作ります。
2. 大丈夫です
ほー先輩:顛末書は「何時に何があったか」を並べるだけや。上手に書こうとせんでええ。順番が合うてたら、それでちゃんと役に立つ。
一般的には、次のように整理されます。職場ごとに運用が違うので、様式があればそちらが優先です。
- 顛末書……発生から収束までの経過を、事実として報告する
- 始末書……そこにお詫びと再発防止を加え、責任を明らかにする
顛末書は、あとで同じことが起きたときに、誰かが読み返すための記録でもあります。数か月後に読む人が、前提を知らなくても追える。そこを目指せば十分です。
謝罪を入れてはいけない、ということではありません。ただ、謝罪で事実が薄まらないようにします。
3. 今日使うAI・道具
使うのはChatGPTと、時刻の分かる記録です。
AIには、実際の出来事、社名、氏名、金額、システム名を渡しません。空の様式を作るところまでに使います。
集める記録は、こういうものです。
- メール・チャットの送受信時刻
- 作業ログ、更新履歴、エラーの記録
- 電話の発着信の記録、対応メモ
- 関係者へ確認した内容と、その日時
時刻が取れる記録から先に集めるのが近道です。記憶は最後に、記録の隙間を埋めるためだけに使います。
4. 実際にやってみる
1. 発生から収束まで、時刻で並べる
評価や理由を入れず、起きたことだけを置きます。
・8月3日 10:15 定期処理が完了しない状態を確認
・8月3日 10:22 担当者へ連絡
・8月3日 10:40 手動での処理に切り替え
・8月3日 12:05 当日分の処理が完了
・8月4日 09:00 再発していないことを確認
2. 「事実」「推測」「未確認」に色分けする
一度並べたら、各行がどれに当たるかを見ます。
- 事実……記録で確かめられる
- 推測……たぶんそうだが、確かめていない
- 未確認……調べれば分かるが、まだ調べていない
推測を事実の顔で書かないことが、顛末書でいちばん大事なところです。「〜と思われる」「〜の可能性がある」と、そのまま書きます。
3. 影響の範囲を、分かっている分だけ書く
「大きな影響はなかった」と評価で書かず、確かめた範囲を書きます。
影響:当日の処理3件が最大2時間遅延。
外部への納品期限には影響なし(8月3日13:00に取引先へ確認済み)
他システムへの波及は未確認
4. 原因が分からなくても、そのまま出す
顛末書は、原因が特定できてから書くものとは限りません。分かっている経過を先に渡すほうが、判断が早くなります。
原因:現時点で特定できていません。
ログの該当時間帯を確認しましたが、エラーは記録されていません。
8月8日までに、◯◯の観点で追加調査します。
5. AIへ空の様式を頼む
実際の出来事を入力せずに使える、顛末書の空の様式を作ってください。
項目は「発生日時」「発見の経緯」「経過(時系列)」「影響範囲」
「原因」「現在の状況」「今後の予定」とします。
日付、時刻、部署名、原因、影響、対応内容は書き込まず、空欄にしてください。
事実・推測・未確認を書き分けられる注記も付けてください。
6. 職場の様式へ移し、記録を見ながら記入する
書き終えたら、時刻が記録と合っているかだけ、もう一度見ます。
5. 完成例
以下は架空の例です。実在の会社・システムとは関係ありません。
顛末書
【発生日時】2026年8月3日 10時15分頃
【発見の経緯】担当者が定期処理の完了通知が届いていないことに気づき確認
【経過】
10:15 定期処理が完了していない状態を確認
10:22 システム担当へ連絡
10:40 手動処理へ切り替え、当日分の処理を開始
12:05 当日分の処理がすべて完了したことを確認
13:00 取引先へ連絡し、納品期限に影響がないことを確認
8月4日 09:00 同時刻の処理が正常終了していることを確認
【影響範囲】
当日の処理3件が最大2時間遅延。
外部への納品期限には影響なし(8月3日13時に取引先へ確認済み)。
他システムへの波及は未確認。
【原因】
現時点で特定できていません。
該当時間帯のログを確認しましたが、エラーは記録されていません。
処理の同時実行が関係している可能性がありますが、未検証です。
【現在の状況】
8月4日以降、同事象は発生していません。手動での確認を継続中です。
【今後の予定】
8月12日までに、同時実行の条件で再現を試みます。
結果を踏まえ、再発防止策をあらためてご報告いたします。
謝罪の言葉がなくても、報告として成り立ちます。求められている場合は、冒頭か末尾に短く添えます。
場面別の書き方の例(そのまま使えます)
[ ] の中は、記録で確かめた内容を入れてください。
① 時系列の一行
[時刻] [誰が][何をした/何が起きた]
主語を省かないでください。あとから読む人は、誰の動きか分かりません。
② 事実として書くとき
[日時]に[事象]が発生しました([確認した記録名]で確認)。
③ 推測として書くとき
[要因]が関係している可能性がありますが、[未検証である旨]です。
④ 未確認を残すとき
[項目]については、現時点で確認できていません。
[いつ]までに[方法]で確認します。
⑤ 影響を書くとき
【影響範囲】
[確認できた影響]([確認方法・確認日時])
[まだ確認できていない範囲]は未確認
「影響は軽微でした」と評価で締めないでください。範囲と確認方法を書きます。
⑥ 収束を書くとき
【現在の状況】
[いつ]以降、[事象]は発生していません。
[監視・確認を続けているか]
⑦ 短く済ませてよい軽微な事案
[日時]、[事象]が発生しました。
[時刻]に[対応]を行い、[時刻]に復旧を確認しています。
影響は[範囲]です。原因は[特定済み/調査中]です。
すべての事案に長文が要るわけではありません。軽微なものは、この形で十分なことがあります。
顛末書で気をつけたいこと
- 評価を混ぜる— 「大きな問題ではなかった」は読む人が判断することです
- 推測を断定で書く— 後で覆ると、報告全体の信頼が落ちます
- 原因が出るまで出さない— 経過だけでも先に渡すほうが、判断が早くなります
- 主語を省く— 数か月後に読む人には、誰の動きか分かりません
- 時刻を丸める— 「午前中」より「10時15分頃」のほうが、あとで突き合わせられます
- 謝罪で埋める— 顛末書に求められているのは経過です
- 関係者への評価を書く— 誰が何をしたかは事実として書き、良し悪しは書きません
お詫びと再発防止まで求められている場合は、始末書の書き方と例文のほうが目的に合います。
6. 使うときの注意
顛末書の様式・提出先・扱いは職場によって異なります。この記事の内容を、自分の職場のルールとして扱わないでください。社内規程や上長の指示を確認します。
事故、労災、個人情報の漏えい、食品や医療に関わる事案など、外部への届出が定められている場合があります。社内の担当部署や所管の窓口を必ず確認してください。顛末書を書くことと、届出は別の手続きです。
実際の出来事、氏名、社名、システム名、金額を一般向けAIへ入力しません。空の様式までで区切ります。
7. 今日できたこと
- 顛末書と始末書の違いを、目的の違いとして押さえられた。
- 記録から時系列を作り、主語と時刻を残せた。
- 事実・推測・未確認を書き分けられた。
- 原因が未特定でも、報告として出せる形にできた。
8. ほー先輩の一言
ほー先輩:顛末書はな、書いた人を守る紙でもあるんや。何時に何をしたか残しといたら、後から「対応が遅い」て言われても、記録で答えられる。せやから、うまく書こうとせんでええ。順番どおり、正直に。分からんことは分からんまま置いといたらええ。それがいちばん強い報告や。
やさしいAI仕事術